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【第2話】ヴィーガンは日本人に馴染が深い?|和食に隠されたヴィーガンとの関係性を紹介

2019年11月、世界中のヴィーガンが利用するレストラン情報サイト「Happy Cow(ハッピーカウ)」で、「世界1位のヴィーガン・レストラン」に認定された和食レストランがあることをご存じですか。

 

東京・自由が丘にある「菜道(さいどう)」です。

同店でチーフシェフを務める楠本勝三さんは、インタビューの中でヴィーガンについて聞かれた時に、「そもそも和食には精進料理という文化がある」と答えています。ヴィーガンと精進料理には「植物性の食材を中心に食事を作る」という共通点があり、今回は、長い歴史を持つ精進料理とヴィーガンとの関係性について紹介します。

(出典:“世界一位”に認定されたビーガン和食レストランが教えてくれたこと|nippon.com)

◇精進料理とは?

精進料理とは、精進物と呼ばれる野菜や豆腐、海藻や木の実など植物性の食材のみで作った料理のこと。肉や魚などの動物性の食材を使用しないのが特徴です。「殺生をしない(生き物を殺さない)」という、仏教の教えに基づいて作られており、修行僧の食事として平安時代中頃に誕生したと言われています。

◇精進料理で使用してはいけない食材

精進料理には使用してはいけない食材が、大きく分けて2つあります。

 

・肉や魚などの動物性の食材

精進料理はヴィーガンと同様に、肉や魚、これらの副産物である卵や牛乳など乳製品を使わないのが基本です。

 

・「五葷(ごくん)」と呼ばれる匂いが強い野菜

人間の心に宿る欲情や怒りの感情を引き起こすとして、ニンニク・ニラ・ネギ・ラッキョウ・ノビルなど、ネギの仲間を使うことが禁じられています。

◇植物性の食材を使った「もどき料理」

私たちが普段から口にしている料理にも「精進料理」由来の料理があります。これらの料理は「もどき料理」と呼ばれ、「手軽に和食が味わえる」と、日本を訪れる海外のヴィーガン旅行者にも人気の高いメニューです。今回はそのようなもどき料理の中から4つのメニューを紹介します。

 

・がんもどき

おでんや煮物の食材として欠かせない「がんもどき」は、精進料理から生まれた料理です。がんもどきとは、木綿豆腐と山芋を練った生地にニンジンや牛蒡、昆布などの具材を混ぜて丸め、油で揚げたものです。がんは鳥の「雁(がん)」が由来であり、雁のつみれの代用品として生まれました。植物性のタンパク質を多く含む木綿豆腐を使用しているため、ヴィーガン食で不足しがちなタンパク質を補えます。

 

・刺身こんにゃく

最近はダイエット食材として、コンビニなどでも買える「刺身こんにゃく」。こちらは「マグロの刺身」の代用品として生まれました。こんにゃくの歯ごたえが、本物の魚の食感と似ており、こんにゃくそのものには味がないので、醤油やワサビとも相性がいいのが特徴。植物由来の着色剤を使用することで、好きな色の刺身を作ることができるのもうれしいポイント。

 

・しいたけのアワビもどき

スーパーの野菜売場に置いてある「しいたけ」ですが、実は調理方法を工夫するだけで、見た目も食感も、高級食材の「アワビ」のようになることをご存じですか。このアワビもどきは、しいたけのかさの中に、豆腐と白胡麻で作った餡を詰め、片栗粉をまぶして油で揚げたもの。しいたけは、免疫力や骨密度を高めてくれるビタミンDが豊富に含まれている食材です。ビタミンDは、ヴィーガン食では摂取が限られてしまう栄養素です。ヴィーガンを実践する人にはおすすめの1品。

 

・精進うなぎ

夏の暑い日に食べたくなる「うなぎの蒲焼き」ですが、こちらも精進料理としていただけるメニューです。本物そっくりな見た目と、ふっくらとした食感は、豆腐と大和芋から作られている。油で揚げているため、蒲焼き表面のカリッと感も再現されており、繊細な和食の魅力に触れたい海外旅行者にも人気の高いメニューです。

◇精進料理とヴィーガンの違い

ここまで、精進料理とヴィーガンには「動物性の食材は使用しない」という共通点があることを紹介しました。ただし、精進料理とヴィーガンには、いくつか異なる点があります。

 

・精進料理では匂いが強い野菜は使えない

精進料理では、ニラやネギ、ニンニクといった匂いが強い野菜は、植物性の食材であっても使用できません。ヴィーガンの場合はこのような縛りがないので、植物性の食材であればどのような食材でも調理できます。

 

・精進料理の中には肉が含まれていることがある

基本的には、肉や魚などの動物性の食材は使用しない精進料理ですが、肉や魚を口にすることがあります。「殺生されているところを見ていない、知らない、自分のために殺生されたと知らない」という3つの条件が満たされれば、精進料理の食材として肉や魚を使ってもいいとされているからです。

◇ヴィーガンは身近な存在です

今回は、ヴィーガンと共通点が多い、精進料理について紹介しました。ヴィーガンという言葉は、日本ではまだまだ馴染の薄い言葉です。ですが、「がんもどき」がヴィーガン食の1つと聞くと、ヴィーガンが身近な存在になるのではないでしょうか。ぜひ私たちが普段から口にしている和食の中から、ヴィーガン食を見つけてみてください。

 

次回、「【第3話】ヴィーガン食品について」では、今話題を集めるヴィーガン食品について紹介します。