外を歩いていても、やわらかな日差しと爽やかな風が心地いい季節になってきて、装いもより軽やかな綿や麻素材のものが活躍する季節となってきました。
春は、新学期や新生活など新しいことが始まる季節です。また、木々の新芽なども顔を出し生命力に溢れた空気が流れています。
ただ、季節の変わり目は、疲労によって心も体も不調がでやすいタイミングでもあるため注意が必要。「しっかり寝ていても、なんだか疲れが取れない」「ふと不安な気持ちになり落ち込んでしまう」「頭痛がなかなか治らない」このような症状がでていたら気をつけてください。
体内のバランスをコントロールする自律神経が乱れている可能性があります。
今回は、季節の変わり目に乱れやすい自律神経について、健康で幸せに暮らすための季節の過ごし方(リトゥチャリア)という考え方を持つ、アーユルヴェーダに基づくセルフケアの方法を紹介していきます。
<目次>
自律神経とは?
自律神経とは、自らの意志とは関係なく私たちの呼吸や体温、血圧、心拍、消化、代謝、など、生きていく上で欠かせない働きの調整を行っている神経です。
たとえば、私たちの平熱は、外気温などの季節の変化に関係なく36℃〜37℃で保たれています。
これは自律神経が外気温に合わせて血流や心拍数の調整を行うことで、体温を一定に保つことができているからです。
自律神経は、交感神経と副交感神経の2つの神経から成り立っています。交感神経は昼間に優位になる(活発になる)神経です。
一方、副交感神経は、夜間優位になる(活発になる)神経で体をリラックスした状態に導きます。
1日の中で交感神経と副交感神経が環境に合わせて自動的に切り替わることで、日々私たちは生活しています。
なぜ季節の変わり目は自律神経が乱れやすいのか?
自律神経である交感神経と副交感神経は、体のバランスを保つために常にオンとオフを繰り返しています。
そのため、季節の変わり目は低気圧と高気圧が頻繁に入れ替わることや寒暖差が激しいことなど変化が目まぐるしく、1日の中で何度もオンオフを繰り返している内に交感神経と副交感神経のバランスがうまく保てず、結果として体調を崩しやすくなります。
アーユルヴェーダとは?
アーユルヴェーダは、世界最古の医療として約5000年前からインドで継承されている世界三大伝統医学の1つです。病気の治療だけではなく、普段の食事方法や美容法にも考え方が取り入れられています。
アーユルヴェーダでは、人はそれぞれヴァータ(風)・ピッタ(火)・カパ(地)と呼ばれる生まれながらに持っている性質(ドーシャ)があるとされています。
これらの性質はヴァータ(風)・ピッタ(火)・カパ(水と地)と呼ばれる、3つの要素によって構成。
この3つの要素は、外気温など季節的要因の影響を受けやすいため、その季節に応じて3つのドーシャのバランスを取ることをアーユルヴェーダでは目指しています。
この「体を構成するドーシャバランスが外気温などの季節的要因の影響を受けやすい」という部分が、自律神経のバランスを保つ部分と共通していることから自律神経のケアとアーユルヴェーダの考え方は相性が良いとされています。
アーユルヴェーダ流自律神経のバランスを整える方法4選
自律神経のバランスが崩れている時は、呼吸が浅く心臓の鼓動も速くなり、体が緊張した状態で眠りが浅くなってしまいます。
アーユルヴェーダにおいては、これらの症状はヴァータ(風のエネルギー)が乱れることによって現れるとされています。ヴァータは、空間に吹く風のように“動く”性質を持ったタイプです。
行動が早くて快活な気質なのですが、生活スタイルが乱れてバランスを崩すと、不安定さが際立ってきます。
緊張や恐怖から何事にも不安を感じ、空虚感や虚無感にとらわれる人もいます。
じっとしていられなくなったり、不安や恐れがでてきたら、ヴァータを静めるために次のようなケアを行っていきましょう。
オイルを使った耳・目・頭皮のセルフアビヤンガ(マッサージ)
アビヤンガとは、アーユルヴェーダオイルと呼ばれる、セサミオイルやココナッツオイルに薬草をブレンドしたものを温め、肌にオイルを浸透させながら行うマッサージです。
自宅で簡単にできるアビヤンガとして、「頭、耳、足裏」の3点マッサージを実践するのがおすすめ。
この3点は、セルフマッサージがしやすい部位であると共に、「マルマ」と呼ばれる東洋医学で言う「ツボ」のようなスポットがあります。
とくに自律神経のバランスを整える「マルマ」はこめかみから首にかけて多く存在しているので、「頭、耳、足裏」の3点マッサージを行うことで、自律神経の乱れが整うことが期待できます。
セルフアビヤンガの手順
- オイルを耐熱容器に入れて湯煎で温める
- オイルを適量(500円硬貨大)手に取り、手のひら全体を使って頭皮に伸ばす
- 頭頂部を手のひら全体で押し回す
- 指先を使って頭皮全体を刺激する
- こめかみや耳の上を指先で刺激する
- 親指と人さし指を使って左右の耳全体をもみほぐす
- 後頭部と首の境目付近を親指で押す
- 髪の毛の付け根に指を入れて、握るように髪の毛をひっぱる
- 足裏全体にオイルを伸ばす
- かかとから足指に向けて手のひらで足裏をさする
- 足の指と指の間を広げるようにマッサージする
- オイルをしっかり体に浸透させるため15分ほどおく
セルフアビヤンガ用のオイルを用意される場合は、アーユルヴェーダオイルとして、スーパーなどでも市販されている、「太白ごま油」や「ココナッツオイル」を代用することも可能です。
寝る前に「ターメリックラテ」を飲む
ターメリックとは、アーユルヴェーダでは欠かせないスパイスの1つ、昔から薬としても使われてきました。
そんなターメリックを使ったラテは、黄金色のオシャレな見た目から「ゴールデンラテ」と呼ばれることも。
ターメリックの他にも、シナモンやブラックペッパーといったスパイス、生姜、ハチミツが使われています。
シナモンに含まれるオイゲノールという成分は副交感神経を優位にして気分をリラックスする効果があります。
またベースとなるホットミルクには、セロトニンと呼ばれる幸せホルモンの分泌を促し、こちらも体の緊張をほぐすことで副交感神経を優位にする効果が期待できるのがGOOD!寝る前に温かいターメリックラテを飲むことで体も温まり、心地良い眠りを誘ってくれます。
積極的に塩味、酸味の食材を取り入れる
アーユルヴェーダでは、体に取り入れる食べ物の味を6つの味(甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味)に分け、それぞれの味によって体への作用が変わると考えられています。自律神経の乱れる原因の1つである、ヴァータを静めたい場合は、6つの味の中でも「塩味」と「酸味」を積極的に取り入れることがおすすめ。
酸味→レモン、ライム、ヨーグルト、チーズ、サワークリーム、酢、ピクルス、梅干し
塩味→海水塩、岩塩、海藻、味噌、醤油、つけもの
自律神経を整えるヨガのポーズを取り入れる
ヨガはアーユルヴェーダと同じくインドで生まれ、共に広まっていった健康法です。ヨガの基本は呼吸。とくに、お腹を膨らませるように深く息を吸い込んだら、お腹をへこませるように鼻から息を吐ききる「腹式呼吸」は、体を緊張から解き放ち、自分の内側に意識を集中させるためにポイントになる呼吸法です。
自律神経が乱れている人は、呼吸が浅く意識が常に他者に向けられている傾向がありますので、心身共に正常な状態に戻すためにも腹式呼吸を行うのは大切。さらに呼吸法に加え、呼吸の質にも影響を与える胸や首の筋肉をほぐすヨガポーズを取り入れるのがGOOD!自律神経を整えるのに役立つヨガポーズについては、詳しくは下記の記事をご覧ください。
自律神経のバランスを保つためにも「ストレス」をためない生活へ
ここまで、自律神経のバランスを整えるアーユルヴェーダ流のライフスタイルについて紹介しました。
自律神経の乱れには、気圧や気温の変化といった気候の変動による影響が大きいと紹介しましたが、実は心理的ストレスによる影響も大きな要因の1つです。
ストレスを受けないことは中々難しいことですが、うまく付き合っていく方法を身につけることはできるのではないでしょうか。
アーユルヴェーダを取り入れたライフスタイルもその内の1つです。まずは、すぐにできる「腹式呼吸」からはじめてみてはいかがでしょうか。