· 

【第4話】ヴィーガンとヨガの関係性とは?|ヴィーガンとヨガの共通点を紹介

ヨガを日常的に実践する人や、ヨガのインストラクターの中には、ヴィーガンをはじめとした菜食主義の生活を送る人がいます。ヨガの成り立ちや、ヨガの持つ精神を紐とくと、実は共通点が多いヴィーガンとヨガ。今回は、ヴィーガンとヨガの関係性について、3つのキーワードをもとに解説します。

○ヨガ×ヴィーガンを理解するための3つのキーワード

ヨガとヴィーガンとの共通点を探る上で重要となるキーワードが3つあります。ここでは、それぞれのキーワードとヴィーガンとの共通点について紹介します。

キーワード1:ヒンドゥー教

ヨガは、バラモン教、ヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教などインドの諸宗教と深く結びついており、それらの宗教の修行法としてインドで生まれました。仏教に取り入れられたヨガの様式は、中国・日本にも伝えられ、その後坐禅となりました。

 

とりわけ、インドの人口の8割が信仰するヒンドゥー教の教えは、ヨガの精神にも深く関わりがあり、ヒンドゥー教の教えの根底には、「すべての生き物には価値を持った魂があり、人間と同じように扱うべき」という思想や、肉体はほろんでも、魂は再生し生まれ変わるという「輪廻転生」の概念があります。

 

ヒンドゥー教の考え方は、「すべての動物の命を尊重する」という精神に基づき、動物性の製品を一切口にしないヴィーガンのあり方と非常に似ています。そのため、ヨガとヴィーガンは親和性が高く、ヨガマスターにはヴィーガン実践者が非常に多いです。

キーワード2:聖典ヨーガ・スートラ

ヨガには、教えを説き哲学的思想の拠り所になる教典がいくつも存在し、その教典の中でも、「カタ・ウパニシャッド」、「バガヴァッド・ギーター」、「ヨーガ・スートラ」、「ハタ・ヨーガ・プラディーピカー」は、ヨガの4大聖典と呼ばれています。

 

その4大聖典の1つである「ヨーガ・スートラ」では、「アヒムサー」と呼ばれる非暴力・不殺生の考え方が説かれています。
アヒムサーは、肉食そのものを禁忌とする概念ではありませんが、肉食をするには殺生が生じてしまうことを考えると、ヨガ実践者が菜食主義になることは自然な流れかもしれません。

キーワード3:アーユルヴェーダ

ヨガが誕生したインドには、「アーユルヴェーダ」と呼ばれる伝統医学があり、サンスクリット語のアーユス(Ayus/生命)とヴェーダ(Veda/科学)を組み合わせた「生命科学」という意味で、約5000年の歴史を持ちます。

ヨガの本場であるインドの料理には、アーユルヴェーダの考えが根付いており、ヨガと共に発展を遂げてきました。アーユルヴェーダでは、食べた物は体だけでなく、心の性質に影響するとされています。

 

アーユルヴェーダにおける心の性質は

・サットヴァ(純粋性)

・ラジャス(動性/活発性)

・タマス(惰性/不活発性)

の3つに分類

 

その中でも肉やニンニクなどの刺激物を摂取することで引き起こされるラジャスの状態は、批判性や攻撃性が増してしまい「他人に対しても自分に対しても、暴力的な言動を慎む」とする、ヨガ哲学「アヒムサー」とは解離してしまいます。

そのため、ヨガ実践者の中にはラジャの状態に陥らないよう、ヴィーガンと同様に肉食を避ける人々も存在します。

○ヨガ実践者がヴィーガンを取り入れるメリット

ここまで、歴史や哲学的思想の観点からヨガとヴィーガンの関係性を紹介しましたが、医学的な観点から見ても、ヨガを実践する人がヴィーガンを取り入れるメリットがいくつかあります。

・メリット1:腹式呼吸がしっかり行える

ヨガを行うにあたって、全身の細胞に新鮮な酸素を届け、ポーズの効果を高める呼吸は非常に重要な要素です。

特にヨガの場合は、お腹を膨らます腹式呼吸を行うため、胃や腸に食べ物が留まっていない状態が理想的と言われています。

そのため、消化に時間がかかる肉などの動物性の食事よりも、消化が早い植物性の食事を選択したほうが、早く空腹状態になり、腹式呼吸の精度も高まります。

・メリット2:血液循環が良くなり運動能力が向上する

動物性の食品は、血液をどろどろにしてしまうコレステロールや脂肪を多く含んでおり、血流を悪くする可能性が。一方で、植物性の食品はコレステロールが低く、血液をサラサラにする効果があります。ヨガは、血液を通じて、全身に酸素やエネルギーを届ける運動です。ですので、血液をサラサラし、血液循環を良くすることはヨガの効果を向上させることにつながります。

・メリット3:筋肉疲労が軽減される

ヴィーガンの主な食品である野菜や果物には、筋肉疲労を取り除く抗酸化物質が多く含まれています。そのため、ヴィーガンを実践してから「運動後疲れにくくなった」「常に体のコンディションが整っている」などの声も聞かれます。全身運動であるヨガは、ポーズによっては筋肉に負荷がかかり、筋肉痛になることも。ですので、薬やマッサージに頼らず、日々の食事から体を回復させられるヴィーガンは、ヨガをする人にもおすすめです。

○ヨガとヴィーガンは「自分の心と体に向き合う」手段の1つ

今回は、3つのキーワードを軸に、ヨガとヴィーガンの関係性について紹介しました。ヨガもヴィーガンも、「ストレスから解放されたい」「動物を大切にしていきたい」「より健康的で長生きしたい」といった、自分の心に正直になるための手段の1つです。そのため、手段に捕らわれすぎて、辛い気持ちになってしまっては本末転倒です。ヨガレッスンの前は、肉や魚を控えて野菜スープだけにするといった行動も、ヨガ×ヴィーガンですので、難しく考えずにできることからはじめてみましょう。